ぶっきーの超・雑記ブログ

「より良く生きる」を模索する。


特攻隊員達の最後の言葉を集めた本「いつまでも、いつまでもお元気で」

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こんにちは、ぶっきーです。

 

毎週木曜更新の「週刊書評」、第6回。

 

今回紹介するのは「いつまでも、いつまでもお元気で(知覧特攻平和会館 編、草思社、2007)」です。

 

ついこの間まで「この世界の片隅に」という戦時中のドラマをやっていました。この流れで「戦争モノ」を読みたくなったため本書を手に取りました。

 

本書は還ることのない出撃を前に、特攻隊員の方達が両親や祖父母、兄弟姉妹、そして日本への思いをつづった手紙を集めたものです。

 

涙なくしては読めません。

 

 

ぶっちゃけどれくらいオススメ?

おすすめ…と気軽に言ってよいものかどうか。本書はエンターテインメント的に読むべき本ではありません。

 

それくらい本書には「魂が込められた重さ」がありました。しかし間違いなく「一人でも多くの人に読んでほしい本」です。

 

対象読者

本書の対象読者は以下のいずれかです。

 

  • 僕みたいに平和ボケしてる方、今を漫然と生きている方
  • 特攻隊員の出撃直前の心境を知りたい方
  • 命を賭して国を守ろうとした人たちが居たことを知らない方
  • 本書を読んだことがない方

 

概要

33人の特攻隊員の手紙と、そこに見える日本の窮状

本書に収められているのは33人の特攻隊員が出撃直前に残した手紙や歌です。

 

そのほとんどが10代か20代前半…こんな未来ある方々が飛行機に乗り、敵艦に体当たりしていったとは…やはりちょっと信じられない気持ちになってしまいます。

 

この本では直接は触れられませんが、こうした特攻隊員の方々は勉強のできる優秀な方(有名大学出身者)が多かったようです。事実本書に掲載されている文章も、知的で整ったものばかりで驚きます。18歳、19歳でこんな立派な文章を書ける人間が果たして今の日本にどれだけいるのか…

 

今の時代に置き換えてみて、東大の方々が戦闘機に乗って特攻すると考えてみてください。これが当時の現実だったのです。日本がいかに追い詰められていたか、国民全員の悲壮な決意が時空を超えて伝わってくるようです。

 

彼らも血の通った人間だった

彼らの手紙や歌を読むと、時代や考え方が違うとはいえ「自分たちと同じ感情を持った人間だった」ことを痛感せざるを得ません。

 

本書に載っている高田豊志さん(19歳、富山県)の、お母様に宛てて詠まれた歌を紹介させてください。

 

夢にだに 忘れぬ母の 涙をば いだきて三途の 河を渡らむ

 

郷里を離れてから何度もお母様の夢を見られたのでしょう。そしていくら出撃が名誉あることとは言え、やはりお母様が心の底では悲しまれていることを高田さんはちゃんと分かっている。だから涙という単語があるんですね。

 

こんな情感あふれる歌を詠んだ方が、操縦桿を握り、爆弾を抱えて敵艦に飛び込まなければならなかった。

 

下手をすると戦後の報道では特攻隊の方々を一種の「狂信者」のように扱うものがありますが、これは大間違いであることが分かります。

 

確かに彼らの多くは「お国のために」「大日本帝国万歳」などと書き残しています。しかしまた同時にそのほとんどが、家族や郷里への想いも添えています。つまりそこには生と死(私と公、と言ってもよいかもしれません)の葛藤があったことが見て取れます。

 

これは恐らくどちらの感情も真実だったろうと僕は想像するのですが、まあいずれにせよ、間違っても彼らが現代のテロリストと同じような狂信者だったとは考えるべきではないでしょう。

 

彼らを憐れむだけで良いのだろうか

僕が特に注意したいのは、彼らを憐れむだけで終わらないようにしたいという点です。

 

国によって作られた風潮であるとはいえ、当時彼らは間違いなく全国民から称えられる英雄でした。彼らの中にはこのことを少なかれ誇りにした方もいたのではないでしょうか。(もちろん、死の恐怖を覆い隠すためにそう思い込もうとした面もあったかもしれませんが)

 

であるならば、我々はその「誇る気持ち」をも含めて彼らの存在を捉えるべきだと思うのです。現代の視点から彼ら一人ひとりの人生の一側面にしか目を向けずにただ「可哀そう」と憐れむだけでは、むしろ彼らの死と人生を冒涜をしているようにさえ感じます。

 

一人の人間に対して真に倫理的な態度を取るならば、彼ら一人ひとりの全存在というか、全人格を正確に捉えようと努めることこそが、僕たちに出来る最大の弔いだという気がしてなりません。そしてその中には、彼ら自身が抱いたであろう「自分は英雄で、死後は英霊になるのだ」という誇りに対する理解と共感も含まれなければならないと思うのです。

 

僕は戦争を、ましてや特攻を肯定しようなどと言っているのではありません。ここは誤解しないでください。戦争なんて嫌に決まっている。戦争を美化する意図など全く無い。

 

そうではなく、ある一人の人間の一生に注目した時、彼が命を賭して何かを為さざるを得なかったのであれば、僕たちにできるのはその人を理解し共感してあげることしかないのではないか。逆に一部しか見ずに彼らの人格を曲解して評価を下してしまうのは冒涜と言えるのではないかと。そう思えてならないのです。

 

まとめ 

僕のような感想を抱くのが「正しい」などと言うつもりは毛頭ありません。ただ何かしら心に響くものがあるのは間違いない本です。

 

本書の大部分は綺麗な海や空の写真で、ページ数は100ページ弱です。よって30分もすれば読み終わってしまうでしょう。

 

なので、少しでも気になった方は手に取ってみてください。おそらくもう新刊では手に入らないでしょうが、古本で見かけたらぜひ。

 

おしまい。