どうも、ぶっきーです。
毎週木曜更新の「週刊書評」、第3回。
今回紹介するのは「持たない幸福論 働きたくない、家族を作らない、お金に縛られない(pha著、幻冬舎、2015)」だ。
ご存知の方も多いかもしれないが、筆者のphaさんは京大を卒業してニートになったお方で、ニート界のカリスマ的存在と言える(僕もニートだから崇拝しなきゃいかんな)。
そんなphaさんの口からいったいどんな幸福論が語られるのか。
ぶっちゃけどれくらいオススメ?
めっちゃオススメ。
対象読者
本書の対象読者は以下のいずれかである。
- 人生が辛い人(特に仕事、お金、結婚、人間関係で悩む人)
- 常識外の生き方に興味がある人
- 退職して不安になっている人、思想的裏付けが欲しい人
- 高学歴ニートの生き様に興味がある人
- 既存の価値観が正しいと信じ切っている人
概要
既存の価値観に囚われるな!
この本の根底に流れる思想はズバリ、「既存の価値観に囚われるな」だ。
筆者は、正社員として働くこと、結婚すること、子育てもしっかりこなすことなどのいわゆる「常識的な価値観」について、次のように述べる。
「現状と合っていない(=実現できない人が沢山いるような)価値観からは逃げていい」
「そんな価値観に従うのは自分の首を絞めるだけだ」
では「常識的な価値観」の代わりに何を大切にすべきなのだろう?筆者は続ける。
「一人で孤立せずに社会や他人との繋がりを持ち続けること」
「自分が何を好きか…(中略)…ちゃんと把握すること」
これは本書の冒頭で示されるphaさんのスタンスで、言われてみれば確かにもっともらしい意見に聞こえる。
しかし凡人の身からすれば、「それはそうかもしれないけれど、だったら具体的に、どんな風に生きたらいいの?」と聞きたくなるのが普通ではないだろうか。
本書ではそんな疑問に対して答えてくれるかのように、「常識的な価値観から逃げた筆者の生き様」が綴られていく。
それは具体的にどんな生き方かというと、「働かない」「家族を作らない」「お金に縛られない」それでいて「自分の居場所が存在する」ような生き方だ。
以下では筆者の示してくれる常識外の生き方を少しだけ取り上げてみよう。
28歳で会社を辞めてニートに
サラリーマン時代の筆者の気持ちを端的に表した一文がある。
「毎日会社に通わなきゃいけないのとか苦行過ぎて意味が分からないし、こんな生き方あんまり面白くないな…」
会社勤めに嫌気が差している人なら共感できるだろう(今はニートの身であるが、僕も良くわかる)。
筆者はこの気持ちを気持ちのまま終わらせず、実際に行動に移した。会社を辞めたのだ。28歳の時だった。
ついでに関西から東京に引っ越ししてしまう。お金がかからないように、自転車や家具のような生活に必要なものなどはネットを通してタダで譲ってもらったりしたらしい。
興味があったので調べてみると、「ジモティー」というサイトが見つかった。このサイトでは個人同士が不用品のやり取りをしているのだ。筆者も似たようなサイトを利用したのだろう。筆者の生き方を真似しようとしている人は覚えておくと良いかもしれない。
こういうわけで、(働いていないにも関わらず)引っ越し先の生活は案外順調に始まったようだ。
収入源も一応あって、主にブログ、古本やデジタル機器を安く手に入れて売る、文章を書いて原稿料を得る、などらしい。年収にして百万円前後とのこと。
そんな生活を筆者は8年(執筆時点で)継続しているらしい。
これを聞いてどう思うだろうか?
今現在ニートの身である僕はとても元気づけられた。会社に苦しめられている人にとっては、「辞める」という選択肢を取った場合の生活がイメージしやすくなり、「こんな生き方もあるかな」と、気持ちが楽になるかもしれない。
もちろんここで紹介したのはphaさんの生き様のほんの一部に過ぎない。本書にはさらにリアリティのあるエピソードが多数盛り込まれている。あなたの中にある常識的な価値観を揺さぶったり、あるいはニート的な生き方をしている人を優しく肯定したりしてくれるだろう。
読みやすい実践的な思想書
「京大卒の人が書いた本?難しくて読みにくそう」と思っているあなた。
本書はめちゃくちゃ読みやすい平易な日本語で書かれているから大丈夫。むしろ優しく語り掛けるような口調で、人生に悩んでいる人の心に沁みるのではないかと思う。
その上で筆者の考えと実践した内容が書かれているので、全体的にとても腑に落ちやすい。
今、「常識的な価値観」に振り回されて辛い思いをしている人は手に取ってみてはいかがだろうか。