書評記事を「週刊書評」と題し、毎週木曜に書くことにする。読書の習慣を取り戻そうという意図である。浅はかである。みんな真似していいよ。
今思い付きで決めたことだから今後この定期更新が守られるかは分からない。いつ断念するか楽しみに見ていてほしい。(だいたいこういうの挫折するよね)
さて今回は「話し方」についての古典的名著「話し方入門(D・カーネギー著、創元社)」を紹介してみたい。
ここで言う「話し方」とは「会話」ではなく「発表」のことだ。重要なプレゼンや結婚式のスピーチ、新しい職場でのちょっとした自己紹介などなど。発表が苦手な人間にとっては地獄の業火で焼かれるに等しい苦痛である。
そんなあなたにとって本書は「具体的に何をしたら良いか」を教えてくれる頼もしい味方になってくれるだろう。
ぶっちゃけどれくらいオススメ?
めちゃくちゃオススメ。
発表が苦手な人、発表を洗練させたい人向け
何を隠そう僕自身が発表やスピーチ超苦手人間である。しかしこの本に書かれている「教え」を実行して、なんとか今まで乗り切ってきた。
「お前プレゼンうめえな」と褒められることまである。(今はニートだからプレゼンする機会自体ないけどな。突っ込まれる前に自分で言っとく)
本書以外にも話し方に関する本をいくつか読んだことがあるが、この本に書かれていない目新しい内容を含むものはほとんどなかったように思う。少なくとも、僕が発表の準備などで困った時に最後に頼るのはいつも本書である。
だから僕と同じように発表が苦手な人にはまず本書を勧めている。それで足りないなら、そこで初めて別の本を手に入れて補えばいい。
また、すでに発表が得意だが更に洗練させたいと思っている方に対しても本書は有効と思う。
発表が得意なあなたはおそらく、経験的或いは直感的に「こうやれば上手くいくのでは」という「コツ」を掴んでいるのだろう。話し方を教える本書はその「コツ」を言語化してくれている可能性がある(本書では言及されないコツをあなたが体得している可能性ももちろんある)。
言語化されるというのは明確になるということ。「コツ」が明確になることで、今までよりも更に効率的・効果的に準備や発表ができるだろう。つまりあなたの発表は洗練される。
本書の概要
本書は以下の12章からなる(異なる版では章の数が変わっているかもしれない。僕が持っているのは新装版である)。
- 勇気と自信を養う
- 自信は周到な準備から
- 有名演説家はどのように準備したか
- 記憶力を増進する
- スピーチの成功に欠かせないもの
- 上手な話し方の秘訣
- 話し手の態度と人柄
- スピーチの始め方
- スピーチの終わり方
- わかりやすく話すには
- 聴衆に興味を起こさせる方法
- 言葉遣いを改善する
ここでは著作権的なアレが怖いので各章の内容をつらつら述べるようなことはしない(そんなんで書評やっていけるのか?)。代わりに数々の方法論を示してくれる本書から僕が学び取った最も重要な教訓をお教えしよう。
それは「話し方の上達のためにはそれなりの努力を覚悟しなければならない」という当たり前の事実だ(本書に直接こんなことが書いてあるわけではない)。つまり努力が要らない特効薬的な方法を探しているようじゃダメってことだ。
「なに当然のこと言ってんの。やっぱアホだったなこいつ」とか思われてそうだが、この「努力不要の特効薬という幻」をついつい無意識に追いかけてしまっている人は少なくないのではないか。そして最近ありがちなキャッチ―なタイトルに騙されて中身のない本を買ってしまうという失敗を、多くの人が繰り返しているのではないか。
だから話し方を上達させるためにはまず「やっぱそれなりに頑張んなきゃだめだな」という認識からスタートしなきゃならないと僕は思う。
そしてその認識の上で、必要に応じて本書に立ち戻りながら努力していくのだ。「話し方上達」という道を進むための正しい方角をきっとあなたに教えてくれる。
なお本書は教訓の具体例(エピソード)が大変豊富である。というか文章のほとんどすべてが具体例と言っても過言ではない。
だから無味乾燥なハウツー本が苦手な人も、本書なら小説の短編を読むように楽しむことができると思う。偉人の逸話も多く教養も身に付く。
本書の読み方、使い方
ここで記事を終わっても良かったのだが、本書をより有効に使ってもらうためにあと少しだけ書く。
上述したように本書は具体例が豊富なのだが、豊富過ぎて話の趣旨が見えにくくなることが度々あった(少なくとも僕は)。いきなり具体例から始まって「先に結論述べろよタコスケ」と言いたくなるところもあったり。その意味で本書は読み易いとは言えないのかもしれない。
とりあえず本書を読むに当たっては「今読んでいる箇所はどんな教訓の例が書かれているのか」を常に意識しなければならない。「ああこのエピソードはこういうことを言ってるんだな」って感じで、一つ一つ合点しながら読もう。
そうすれば話の趣旨を見失うことなく、教訓の意味するところを掴みやすくなるだろう。
逆にこれができないと本書を読むのはかなり辛い。もっと薄くまとまっている他の本を探した方が良い。
そして最終的には目次を見ただけで「各教訓が言わんとすること」を思い出せるようになるのが理想だ。本書はボリューミーなので、発表準備のたびに最初から最後まで読み返していたのでは大変過ぎる。まず目次を見て自分のやるべきことを把握し、目次の内容が思い出せない時だけその章や節を読む、といった使い方が効率的だろう。(僕がこうやってるというだけ)
ちなみに本書は書籍版だけでなくkindle版もある。だけど使い勝手的には書籍がいいかなーと。これに限らず何度も読む本は電子書籍より実物がいいと思うよ。
以上。本書を活用してあなたが発表する喜びを得られることを願う。