ぶっきーの超・雑記ブログ

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日本最高の頭脳、羽生善治が暴く「人工知能の核心」レビュー

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こんにちは、ぶっきーです。

 

毎週木曜更新の「週刊書評」、第8回。

 

今回紹介するのは「人工知能の核心(羽生善治・NHKスペシャル取材班 著、NHK出版新書、2017)です。

 

この本はNHKスペシャル「天使か悪魔か 羽生善治 人工知能を探る(2016)の番組取材で得られた「過去から最先端までの人工知能に関する知見」と「羽生さんの考え」をまとめたもの(ちなみに番組本編より本書の方が内容は濃密です)

 

ご存知の通り羽生さんは将棋界を代表する棋士ですが、本書は将棋を全く知らなくても楽しめます。

人工知能にさえ興味があるのなら、ぜひ手に取っていただきたい良書です。

 

ぶっちゃけどれくらいオススメ?

めちゃくちゃおすすめ。

 

対象読者

本書の対象読者は以下のいずれかです。

 

  • 人工知能に関心がある方(素人玄人問わず)
  • 人工知能との付き合い方に興味がある方
  • 人工知能にとって困難なことは何か知りたい方
  • 人工知能と比べた時の人間の特徴を知りたい方
  • 人工知能開発の最先端を知りたい方
  • 羽生さんの多才さを実感したいファンの方

 

将棋のことは知らなくても大丈夫ですよ!

もちろん将棋に関する話は出てきますが、その都度説明があるので問題無く読めます。

 

概要

「羽生さんによる解説 → 補足」という構成

本書は全5章から成ります。

その各章が「羽生さんによるポイントの解説・持論 → NHKの制作部による補足」という構成になっています。

 

内容的には「AIが台頭してきた理由」から始まり、「実用例」「倫理的な問題」「人工知能の行く末」「今後人間は人工知能とどう関わっていくべきか」などなど、幅広く語られます。

門外漢でも読める親しみやすい文章でありながらも、話題は最終的に人工知能開発の最先端を越え、その未来にまで至ります。

 

書き方が平易で話題が多岐に渡る書籍の場合、一般的には少なからず表面的(非本質的、或いは曖昧)な内容になる傾向があるかと思います。

しかし本書は違います。

多岐に渡る一つ一つの話題において、「確かな(あやふやと感じる所がない)知見」を与えてくれます。

 

以下で述べるように、これはひとえに羽生さんの「卓越した能力」に依るところが大きいでしょう。

 

羽生さんの核心を見抜く能力、予測力の高さ

まずとにかく驚かされるのが、羽生さんの「核心を見抜く能力」の高さ。

「ものごとをシンプルに表現する能力」と言っても良いでしょう。

羽生さんの説明は端的で分かりやすいのです。

 

さらには未来に対する予測や、我々がどうやって人工知能と向き合うかといった持論も羽生さんご自身の経験に基づいていて述べられていて、納得できるものばかり。

 

ここで羽生さんの「予測能力の高さ」を裏付けるエピソードがあります。

 

1996年、将棋棋士に対して「コンピュータが将棋棋士を負かすのはいつ?」というアンケートが行われました。

強豪と言われる人たちの回答はこうでした。

 

米永邦雄「永遠になし」

加藤一二三「来ないでしょう」

村山聖「来ない」

郷田真隆「人間を越えることはできないと思う」

 

そんな中、羽生さんの答えはこうでした。

 

「2015年」

 

ドワンゴ主催の将棋電王戦において、プロの将棋棋士が初めて将棋ソフトに敗れたのが2013年。

羽生さんはほぼ正確にその時を予測していたのでした。

約20年前、「そもそもコンピュータに負けるはずがない」との意見が多数ある中で。

 

制作部によるフォローもナイス

普通、話題が広がれば広がるほど読者は話の筋を捉えにくくなるものです。

 

本書の場合は羽生さんの解説の後に制作部がその章のまとめと補足をしてくれるため、「この章で何が述べられたか」を復習できます。

せっかく得られた知見を脳から揮発させずに記憶として定着させるために、この補足がうまく機能していると感じます。

 

さらに羽生さんと世界の研究者とのやり取りを第三者視点から見た印象や、各技術の開発背景などは純粋に興味をそそられます。

 

良い構成なのではないでしょうか。

 

すでにアメリカでは弁護士が職を追われ始めている

 本書で僕が学んだ内容の一部をご紹介しましょう。

 

近年、「人工知能に奪われる可能性が高い仕事ランキング」などがよく話題になりますよね。

実はもうすでに奪われ始めているってご存知でしたか?

 

アメリカでは高性能な判例検索のソフトウェアが開発され、普及しました。

そのために判例の分析を主な仕事としていた「特許専門の弁護士」が大量にリストラされたのです。

 

これは人工知能が社会に与えるインパクトの具体例です。

弁護士になれば一生安泰かのように世の中では思われているかもしれませんが、士業と言えど安泰ではないのです。

それどころか既に職を追われてしまった人達が大量に存在する…。

 

そもそも「分析する仕事」は人工知能の得意とするところで、最も代替されやすい危険な分野。

今後も同じように職を追われる人たちが次々に出てくるのでしょうね。

 

人工知能について関心が無かった方も、将来のために「人工知能が何たるか」について学んでおくとリスクを低減できるかもしれません。

 

まとめ 

僕は本を読むときは読書録をつけながらポイントをまとめる習慣があるのですが、本書においては意味がありませんでした。

それくらいポイントがぎっしり詰まった本だということです。

 

そして本書を読み終え、人工知能をどのように意識していけば良いか、人間として何を磨くべきかが明確になりました。

人工知能は決して「敵」ではありませんよ。

これも本書を読めば分かります。

 

あなたもぜひこの本を手に取ってみてください。

 

以下は人工知能の与える影響と将来についての簡単な考察の記事です。

お時間ある時にでもご覧ください。

 

www.book-buku-bucky.com

 

おしまい。ぶっきーでした。